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王道×王道=究極!?北のフルーツ王国から世界に羽ばたく「余市りんご&余市ぶどう」

寒 さ も 雪 も 捨 て た も ん じ ゃ な い ! ?

アイスとの相性抜群のフレーバーといえば、やっぱりフルーツ!果物が持つ自然な甘みや酸味、爽やかな香りがミルクともぴったりですよね。畑作や酪農などのイメージが強い北海道ですが、実はたくさんのフルーツが栽培されているのをご存知でしょうか?プルーンに梨、さくらんぼ、ベリー類。どれも魅力的で悩ましいですが、「大地のアイス」はフルーツの王道"りんご"と"ぶどう"に着目!早速、北海道の果樹栽培の中心地・余市(よいち)郡へと足を運びました。

原料としてチョイスしたのは、果汁本来の風味をダイレクトに感じられるストレートジュース。中でもさまざまな品種を組み合わせ、甘味と酸味、風味のバランスを極めたブレンドジュースを選びました。ジュースを製造しているのは、町内でも老舗企業の(株)北王よいち。そして、ジュースの要となるりんごとぶどうを栽培するのは、余市町・仁木(にき)町の果樹生産者の皆さんです。

今回お話を聞かせてくださったのは、中井観光農園の中井淳さん。2023年に創業100周年を迎えた同農園では、8haの農地でさくらんぼ、プルーン、ネクタリン、プラムなどを育てています。中でもりんごは30種類もの品種を取り扱い、ぶどうはワイン専用と生食用の品種を栽培するなどバラエティー豊か!観光農園として消費者を受け入れながら、ご自身で6次化にも取り組んでいます。
ところで余市町は、明治時代から始まったりんご栽培を皮切りに、道内でもトップクラスのフルーツの生産量を誇る地域。同じ余市郡の仁木町と合わせて、なんと道内約6割の栽培面積を占めるそう。こんなに果樹栽培が盛んになった理由はどこにあるのでしょうか?

中井観光農園代表の中井さん。ジュースやジャムのほか、最近ではワイナリーも設立。りんごの木のオーナー制度などユニークな取り組みも行っています。

ブドウ畑が広がる高台からは、豊かな海産物をもたらす美しい海と、そこに突き出した「尻場山」という余市らしい風景がのぞめます。

「果樹に必要な寒暖差があるのがポイントです。実はフルーツって単純に甘いだけではおいしくはなくて、甘みと酸味とのバランスが大切。それを生み出してくれるのが寒暖差なんです。余市町では秋頃、日中で20℃前後、夜間に10℃を切るくらいの気温差になります。そこで一気に甘みが増して、色づきも進むんですね。また、雪が適度に降り積もることも必要。特にブドウの場合は寒すぎると木が枯れてしまうので、保温の役割を果たす雪の存在は欠かせません」と中井さんは説明します。
さらに町内でも果樹農園が多い高台エリアは、風通しや水はけも良く果樹栽培にむいているのだとか。余市町がフルーツ王国になったのは、気候風土に着目した先人たちの先見の名があったから??かもしれません。

桃栗三年柿八年。それでも果樹栽培には夢がある

実家の農園に就農して40年弱になる中井さんですが、多彩な品種の栽培とともに、15年ほど前から新しい栽培方法にもチャレンジ。野菜に比べ難しいと言われる有機肥料と低農薬で果樹栽培に取り組んできました。

「有機肥料を使うことで何が変わるかと言えば、コク。肥料を切り替えた最初の頃は、樹勢(木の勢い)が弱くなったり収量も落ちたりするのですが、反対に果実の旨みはグンと増しました。とにかく本当においしい果物を作りたい!という思いが強かったので挑戦できたのかな」と中井さん。

桃栗三年柿八年…ということわざがあるように、果樹は実るまでにとても長い時間がかかる上、簡単に植え替えできません。何事も未来は分からないものですが、長期的な目線でじっくりと腰を据えて臨まなければならない仕事、それが果樹生産なのです。

「りんごの場合は、実がなるのに5年ほど。安定して生産できるまでに10年はかかります。これまでいろいろな品種の栽培にチャレンジしてみて、うまく育たなかった(目指す美味しさに到達しない)こともありました。でも、10年後に一体どんなものができるんだろう…という楽しみがありますね」

余市町は「北のフルーツ王国よいちワイン特区」として内閣総理大臣から認定を受け、新規就農者の移住や醸造所の新設なども進んでいます。

遠く余市の海がキラキラと輝き、ヨーロッパを思わせる雄大な景色。実りの秋には真っ赤なりんごと、粒揃いのぶどうたち。空気を感じ、伸び伸びと働ける環境が生活の一部として側にあったからこそ農園を継ぐことが自然だったという中井さん。そして「余市のフルーツのおいしさを、全国の皆さんに知ってもらいたい」との思いが、生産技術を高め続け、果樹栽培を続けてきた原動力になっています。

大手にはマネできない100%地元産原料のこだわり

次にお邪魔したのが、中井さんをはじめ余市郡(余市町・仁木町)の果樹生産者の皆さんの思いのバトンを受け取り、最高の形で提供する(株)北王よいちです。高級フルーツ専門店のプライベート商品を製造するなど、技術と品質は折り紙付き。北海道にとどまらず全国、そして世界にも多くのファンを獲得してきました。

同社のジュースのおいしさの秘密は、地元産の原料のみを使っていること。果汁を殺菌した後、そのままボトルに詰める「ストレート」製法を採用していることにあります。特に100%果汁のストーレートジュースは果実の品質が製品のクオリティに直結するため、原料確保は最重要ポイントと言っても過言ではありません。

北王よいち代表の小田さん。祖父と父から受け継いできた生産者との絆を大切にしながら、製品づくりに力を注いでいます。

1年間で使用するりんごは52,000㎏ 、ぶどうは71,000㎏もの量に!

「大手メーカーの場合は大量生産・大量販売で利益を確保するため、原料も大量に必要になります。そうすると一つの地域だけでは必要量を確保できず、広く“国内産”や“海外産”として買い付けるので品質が安定しにくい。一方で私たちは、買い付けを弊社の前身でもある関連会社((有)小田商店)が手がけており、長年の生産現場との信頼関係の上で安定かつ品質の高い原料を仕入れられる環境を作ってきました」と話すのは代表の小田勝也さん。地域を知り尽くした、生まれも育ちも生粋の“余市っ子”です。

その年々の生産量やジュース製造のタイミングによっても変わりますが、りんごジュースは5種類以上をブレンド。さらに自社農園で生産する「ブラムリーズシードリング」という品種(イギリス原産。強い酸味と独特な食味、芳醇な香りを持つ)を加え、メインフレームとしています。また、ぶどうジュースには生食用とワイン専用種から5種類をブレンド。ワイン専用種(白)を加えることで、糖度と酸のバランスが整い、風味に深みが現れるのだとか。これはおいしいわけだ…!!

未来への投資で、ふるさとを守りたい

おいしい果汁を、おいしいままにジュースにする。言葉にすると簡単に聞こえますが、そこには同社ならではのさまざまな工夫が施されています。

例えば、その一つが殺菌。果汁を直接加温するのではなく、管に通して熱を加える方法を採用。加温の際に起こる水分蒸発や香りが飛ぶことを防ぎ、フルーツ本来が持つフレッシュ感や風味をそのまま閉じ込めているのが特徴です。

100%ジュースには、水分を飛ばし一度ペースト状にした後、再び水分を加え元の濃度にする「濃縮還元」があります。保存や運搬コスト面でメリットがあるものの、水分と一緒に風味も損なわれてしまうため、同社はストレート一択。

フルーツは傷や色づき、形の悪さが少しでもあると“秀”品としては販売できません。同社は、味のクオリティでは秀品と遜色のない生食用のフルーツを買い取ることで、生産者の収入アップに貢献しています。

「農地の日当たり、その年の天候、栽培方法。さまざまな要因があるので、りんごやぶどうの味が全て同じになることはありません。ですが商品としては、いつでも安定的においしくなくてはならない。そのためには加工の手間や技術が必要なんですね。これまで経営を続けてこられたのは、このクオリティを守り続けてきたことと、お客様がその価値を認めてくれているからだと思います」
品質への強いこだわりを持つ理由は、同社が農業生産者と民間企業(前身の(有)小田商店)が共に立ち上げたバックグラウンドからも垣間見えます。

「6次化という言葉もまだなかった平成4年に、町内では民間企業として初めてフルーツの加工に着手したのが北王よいちでした。生産者の収入が少しでも増えるように付加価値をつけるとともに、これからの時代は新しいことに挑戦しないとならないという思いもあったのだと思います」

余市郡産にこだわった製品作りも、企業とのコラボレーションも、今手掛けていることはすべて次世代に向けた投資だと語る小田さん。「これから先、地域の人口が減少するのは避けられないかもしれませんが、故郷はいつまでも残っていてほしい。余市のフルーツがいかにおいしくて素晴らしいかをアピールして、町の名前を世界に広げていきたいですね」と力強いメッセージをくれました。

もぎたての果実のみずみずしさ、爽やかな香り、天然の甘味と酸味の絶妙なバランス。余市の自然と100年を超えて繋いだ歴史、生産と加工の最強タッグで完成した究極のアイスをぜひ一度ご賞味ください。

(取材・文/ ライター 長谷川みちる)

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