COLUMN

小さな種にみんなの想いを乗せて。風味とコクが決め手の大人味「和寒シーズのペポナッツ」

ペポナッツとは何者か?

「大地のアイス」のフレーバーを眺めてみると、淡いグリーンの爽やかな顔をしたアイスが一つ。その名も「和寒ペポナッツ」です。ピスタチオのような雰囲気を持ちつつ、後味には独特の香ばしさがある不思議なアイスです。なんだかユニークな響きの名前を持つ原材料は、いったい何者か。その秘密を探りに、生産地である北海道和寒(わっさむ)町へ。ペポナッツを加工・販売している(株)和寒シーズの平崎徹さんを訪ねました。


「ペポナッツはズバリ、カボチャの種です。スーパーで販売されている日本カボチャや西洋カボチャとは異なり、ズッキーニやハロウィンで見かける“おもちゃカボチャ”の仲間のペポカボチャに分類されます。平均で4kg、大きいものだと6kgもの重さに。一般的なかぼちゃは2kgほどなので、かなり大きいのが分かりますよね」

渋めのグリーンが特徴的なペポナッツ。ペースト化し、アイスに混ぜると爽やかなグリーンに変身。栄養素が豊富で、機能性にも優れていることから根強い人気が。

実はこれまで国内で販売されている食用カボチャの種は、海外からの輸入品がほとんどなのだとか。国内でも食用種子向けペポカボチャを作ろうと北海道農業研究センターが研究を進め、今から10年ほど前に「種子に硬い殻が付いていない」「収量が多い」「粒が大きい」「緑色が濃い」といった特徴を持つ「ストライプペポ」を開発。国内のカボチャ生産量(作付け面積)第1位を誇る和寒町で、生産が始まりました。

渋めのグリーンが特徴的なペポナッツ。ペースト化し、アイスに混ぜると爽やかなグリーンに変身。栄養素が豊富で、機能性にも優れていることから根強い人気が。

気になるのは、そのおいしさ。ストライプペポの種はしっかりとしたコクがありつつ、渋みやえぐみが少ないのが特徴で、“クセになるおいしさ”なのだそう。
「機能性も優れていて、鉄分や亜鉛がアーモンドの約2倍も含まれています。タンパク質も豊富です。漢方としても使われているほど、実は昔から重宝されてきたようですよ」と平崎さんは説明します。

国産栽培&加工のペポナッツは、とにかく希少!

和寒町では「カボチャを作っていない農家を探す方が難しい」というほど栽培が盛んですが、町内で100戸ほどいるカボチャ農家のうち、20戸がストライプペポを生産しています。平崎さんが1戸1戸を訪問して契約栽培を依頼し、町の新たな取り組みに賛同する農家さんたちが集まりました。

和寒町は旭川市から車で1時間ほど北にある町。夏と冬・昼と夜の気温差を生む盆地特有の気候を生かし、カボチャの生産(作付け面積)日本一に。

農業分野でも機械化・ICT化が進んでいるとはいうものの、カボチャの収穫はまだ機械化されていないので全て手作業です。……想像していただきたい。例えば2kgのダンベルを何百・何千個も運び続けるとしたら、どんなに重労働か…。さらにさらに、5kg(+1kg)入りの米袋を何百・何千個運ぶとしたら、どれだけ大変なことか…!!

収穫の頃になると黄色く色づくストライプペポ。大きい!

ストライプペポは日本カボチャや西洋カボチャに比べて「栽培のスタートが早く、収穫が遅い」という特殊性があるため、他のカボチャと同じスケジュールを組めないところにも手間がかかるそう。種に青臭さが出てしまうため果肉が完熟するまで収穫を待たなければならず、別途の作業が必要に。農家さんとしては効率よく一気に収穫したいところですが、おいしいペポナッツを作るために「そこをなんとか!!!」と協力してもらっているそうです。

種が世代を超えて人をつなぐ

生産の後にも、長い道のりが続きます。加工場に運ばれたストライプペポは、カットして種と綿を吸い出し、洗浄、乾燥、選別、焙煎を経てようやく商品に漕ぎ着けます。どうやら、この工程にもご苦労があるそうで…。

「まず、カットの段階から一苦労なんです。ストライプペポは皮が硬くてサイズも大きいので、普通の包丁だとそもそも刃渡りが足りないですし、皮に刃が入らない。カボチャ専用のピーラーがあるので試してみたこともありますが、全く歯が立ちませんでしたね(笑)それから、種の選別作業。厚みや見た目(割れていないか)などを一粒一粒チェックしていくのですが、これが夢に出てくるほど大変で(苦笑)今は選別機を導入していますが、最終的には人の目と手でチェックしています。おいしさの担保は、作業員さんたちのやる気で保たれていると言っても過言ではありません」

和寒シーズ代表の平崎さん。結婚を機に和寒町に移住して義父の農業を手伝う中、会社の代表に抜擢されました。作業員の皆さんとは、両親と息子、祖父母と孫のように親しい間柄に。

ストライプペポは全量、和寒シーズが買い取っているそう。夏のペポナッツは一般的なカボチャと似ていますが、よく見ると縞模様(ストライプ)が。

種が割れるのを防ぐため、焦らず、ゆっくりと水分を抜く乾燥の工程。種自体が油分を豊富に含み酸化しやすい特徴があるため、温度と時間のベストバランスのタイミングを見極める焙煎の工程。そのような細やかな作業を経て商品となるペポナッツは、1玉からたった100gほど。この希少な100gは、和寒の人たちの血と涙と汗の結晶なのです。

和寒シーズ代表の平崎さん。結婚を機に和寒町に移住して義父の農業を手伝う中、会社の代表に抜擢されました。作業員の皆さんとは、両親と息子、祖父母と孫のように親しい間柄に。

小さな種を通し、世代を超えて交流が広がっている。種が人を紡いでいる。そんな暖かい繋がりと、品質に妥協しないプロ魂で作られているペポナッツを、たっぷり使った「大地のアイス」。召し上がる際は、少し溶けてきたタイミングを狙ってください。ピスタチオのような風味とコクの後から、カボチャの種のニュアンスがフワッとやってくる、ちょっと大人なアイスです。

(取材・文/ ライター 長谷川みちる)

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