地域課題をアイスで解決!?
東西南北、83,422km2のポテンシャルを持つ北海道には、魅力的な食材がたくさん眠っています。大地のアイスは王道から変化球まで道内各地の魅力あふれる素材を活かしたアイスをお届けしてきましたが、2024年9月、新たなフレーバーが仲間入りしました!その名も「穂別ともりん」。むかわ町穂別の特産品である「カンロ」を使用した、爽やかな香りとさっぱりした甘みが特徴的なアイスです。
実はこのフレーバーは、北海道鵡川高等学校の生徒たちの発案によるもの。町の課題を発見し、解決案を模索する「むかわ学」という探究学習が起点になっています。地域課題とアイスが、一体どのように結びつくのか?……ということで早速、むかわ町へ。発案者の友近観聡さんと西本あこさんにお話を伺いました。
「家庭菜園で栽培したトマトが、形の悪さや傷がついたことで“お裾分け”できなくなるのを見て、これを無駄にしない方法ってないのかなと思ったんです。もしかすると農業の現場でも同じようなことが起こっているんじゃない?という疑問がプロジェクトのスタートラインになりました」と説明する友近さんと西本さん。自分たちの暮らす町の産業についての学びに加え、日々の生活で感じた素朴なクエスチョンが交差し、活動のテーマが決まったのだそう。
さらに学びを深めていくと、作物を生産する限り一定数の規格外品が発生してしまう現実や、その二次利用方法が見つかっていない状況を知ることに。ロスをできるだけ減らしながら、地元の農産物の魅力を広く知ってもらう方法を模索するうち、どんな世代にも食べやすい“アイス”へ加工するアイデアがひらめきました。
賞味期限は収穫から4日。昔なつかし、伝統の味
むかわ町の農産物といえば、トマトやレタス、カボチャ、長いも、いちごなどなど多彩ですが、二人が着目したのは「カンロ」。ウリ科の伝統野菜・マクワウリの品種の一つで、全国各地のご当地野菜(果物)として様々な品種が栽培されています。メロンのようでメロンではないユニークな作物で、北海道では「北海カンロ」という品種を目にしたことがあるかもしれません。
同町のカンロは「小林香瓜(こばやしかおりうり)」という独自の品種で、“ともりん”の愛称(登録商標)で親しまれている町のブランド品。糖度は15度近くもあり、果実としての甘みも携えながら、ウリ科の特徴であるみずみずしさや清涼感を持っています。収穫から賞味期限が4日と短く、出荷エリアが限られるのが難点ではあるものの、幅広い世代からの根強い人気を誇ってきました。
畑に足を運んで「ともりん」の開発秘話や栽培方法を聞いたり、収穫を体験しながら作物のストーリーを掴んでいった友近さんと西本さん。当初「アイスの開発は難しいのでは…??」と周囲から心配する声もあったそうですが、「どんな世代にも食べやすい食品であれば、評価やフィードバックをもらいやすく、改善にもつながりやすいはず」と、強い意志と熱意でプロジェクトに取り組みました。
一生に一度の奇跡が、今ここに
二人の思いを受けて原料の提供に協力したのは、「ともりん」の生みの親の小林朋導さん。そして、ほべつカンロ生産部会の皆さんと販売管理などを手掛けるJAとまこまい広域の中村伸一さんです。小林さんは(有)小林農園の3代目。作物の生産とともに、「ともりん」の種の生産も手掛けています。
「ともりん」は、露地栽培の青肉メロンとマクワウリを掛け合わせて誕生した新品種。「庭先に商品を買いに来てくれるお客さんから『昔のあじうり(カンロ)をもう一度食べたいね』と要望をいただいたり、農協から『地域独自の品種を作れないか』と打診されたことが、チャレンジのきっかけです。商品として一定のレベルの美味しさになる掛け合わせが見つかるまでに5〜6年、さらに栽培方法の確立までに数年かかりました」と小林さんは振り返ります。
既存の青肉メロンだけでも数百品種は存在しているというのですから、その中から最も適した一つを探し当てるのは至難の技。何通りもの掛け合わせを試験栽培し、果実としての特性や味の検証を続ける根気が必要です。優良と思われる品種を試験栽培し果実を試食したところ、香りは良いが甘みが薄く、落胆していましたが、そんなある日のこと。小林さんは、最初に実った果実ではなく、“後成り”と呼ばれる時間差で育った方が美味しいことを発見。収穫初期から美味しカンロが採れるよう栽培方法を改良し、見事「ともりん」をこの世に生み出しました。
実は個人農家が新品種を開発できるのは極めて稀で、一生のうちに1品種ができれば大成功という世界だそう。実際に小林さんはメロンの新品種開発の挑戦も続けていますが、30年以上たった今も商品としてお披露目できるレベルの品質までは至っていないのだとか。作る人の知識や技術、時間と労力、そして偶然や奇跡も加わって、美味しい食べ物が私たちの手元に届いていることを実感させられます。
世代を超えて愛される、町のアイスに
最後のバトンを受け取ったのは、私たち大地のアイス。レシピ開発に全面協力しました。メロンをはじめとするウリ科の加工品は、果汁をたくさん使うとウリ臭さが勝るため、香料を使うのが一般的。また、甘みを強調させることが多く、素材本来の味やおいしさを表現するのが難しいと言われています。レシピ開発は、汗と涙の結晶であるともりんの魅力を最大限に引き出しながら、大地のアイスのポリシーである「乳化剤・安定剤・香料フリー」を両立させるのがミッションとなりました。
気になるレシピは企業秘密…ですが、完成したアイスはともりん特有の香りを残しながら、さっぱりとした甘みと清涼感のある仕上がりに。友近さんと西本さんも「想像を超えて美味しかった!!」と口をそろえるほど、満足なものになったもよう。小林さんも「ともりんは生で食べるのが一番おすすめなので、正直うまく形になるんだろうか?と不安はありました。ですから、よくここまで風味を生かしてスイーツに仕上げることができたなと感動しましたね」と太鼓判を押してくれました。
将来を見定める大切な進路活動の合間を縫って、プロジェクトに励んだ高校生たち。熱い思いが人を巻き込み、地域の新たな魅力を生み出すことが自分たちにもできるということ。この経験をしっかりと携えて、社会に羽ばたいてほしい。小林さんや中村さん、そして町の大人たちの温かな思いも、アイスには詰まっているような気がします。
穂別ともりんは、むかわ町の道の駅「四季の館」や「ぽぽんた市場」など地域の小売店で販売するほか、大地のアイス オンラインストアで販売中です。今後は、ふるさと納税の返礼品としての可能性も模索中とのこと。季節限定、個数限定の貴重な「穂別ともりん」。ぜひ、ともりんの故郷・むかわ町にも遊びに出掛けてみてください。